
COVID-19の影響で延期されていたシンシア・エリヴォ主演の『ハリエット』(2019)が6月5日金曜日に公開されました!
第92回アカデミー主演女優賞、歌曲賞にノミネートされた本作は、奴隷解放運動家のハリエット・タブマンの激動の人生を映画化した作品です。
日本人にはあまり知られていない存在ですが、アメリカでは20ドル紙幣の肖像に採用されるほどの人物です。(2020年6月10日現在発行は未定)
第92回アカデミー賞でシンシア・エリヴォの「スタンド・アップ」を聴いた人、ジャネール・モネイのオープニングアクトを見た人はきっと劇場に足を運ぶでしょう!
シンシアのソウルフルな歌に、いつの間にか画面から目と耳が離せなくなっていました。
WOWOW入ってよかった!と思った瞬間でもありました。
心から自由を求め、他の人にも自由を与えた人物の半生をスリリングに、感動的に描いています。
おススメ度
『ハリエット』(2019)の感想、解説をしていきます!
『ハリエット』(2019)の作品情報

© Focus Features
製作年 | 2019年 |
原題 | Harriet |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 125分 |
ジャンル | ドラマ、伝記 |
監督 | ケイシー・レモンズ |
脚本 | ケイシー・レモンズ、グレゴリー・アレン・ハワード |
主要キャスト | シンシア・エリヴォ(ミンティ/ハリエット)
レスリー・オドム・Jr.(ウィリアム・スティル) ジャネール・モネイ(マリー・ブキャナン) ジョー・アルウィン(ギデオン・ブロータス) |
『ハリエット』(2019)の概要

© Focus Features
アメリカでは誰もが知る奴隷解放運動家、ハリエット・タブマン。
1849年アメリカ、メリーランド州ドーチェスター郡。
小さいころから農園の奴隷として過酷な労働を強いられてきたアラミンタ・ロスは、奴隷主が急死して売られることになった。
遠く離れた南部に売り飛ばされたら二度と家族に会えることができなくなると考えた彼女は、奴隷制度が廃止されたペンシルバニア州へたった一人で旅立つのだった。
『ハリエット』(2019)のキャスト
ハリエット/シンシア・エリヴォ

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ハリエットの本名はアラミンタ・ロス(通称ミンティ)
父親と夫は自由黒人として木材屋で働いているが、母と兄弟たちは農園で奴隷として暮らしている。
幼いころ奴隷監督に投げられた分銅で頭蓋骨が割れる重体となり、その後ナレコプレシー(睡眠障害)とてんかんを患うようになった。
農場主の急死後、売りに出されることを知ったミンティは、奴隷が廃止されているペンシルバニア州へ一人で向かう。
恥ずかしながら、私花子は、アカデミー賞を見るまでシンシア・エリヴォを存じ上げませんでした。
「カラー・パープル」の舞台に出演してトニー賞を受賞するほどの実力者なんですね!
アカデミー賞でのパフォーマンスは、圧倒的な歌唱力とカリスマ性に磁石のように惹きつけられて、画面から目が離せませんでした。
誰?なんの映画の曲?とすぐさまググる私は我慢知らずの現代人。
「ハリエット」という奴隷解放運動家の話と知るや、すぐさまその場でムビチケを購入する私は努力知らずの現代人。
とにかくシンシア・エリヴォもハリエットもどちらも知らなかった私にとって、本作はとても重要な作品になりました。
マリー/ジャネール・モネイ

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奴隷制度が廃止されているペンシルバニア州フィラデルフィア生まれの自由黒人のマリー。
アパートを経営しており、ハリエットに出会って彼女の意思の強さを知り、彼女の手助けをする。
第92回のアカデミー賞は、オープニングアクトを圧倒的なエンターテインメント性とメッセージ性で歌い演じました。
生まれが違うハリエットとの言葉や服装の違いを表すキャラクター、ハリエットを助けるキャラクターとして抑えた演技で好演しています。
本来のパワーあふれる彼女のステージと見比べるのも楽しいと思います!
ウィリアム/レスリー・オドム・Jr.

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ウィリアム・スティルはフィラデルフィアで、奴隷解放運動をしている自由黒人。
奴隷解放組織「地下鉄道」の一員。
ハリエットの手腕を見込んで組織の仲間にし、多くの奴隷解放に尽力した人物。
演じるレスリー・オドム・Jr.はミュージカル俳優であり、歌手でもあります。
2016年にトニー賞を受賞した「ハミルトン」で注目され、ケネス・ブラナー監督の『オリエント急行殺人事件』(2017)にも出演。
ギデオン/ジョー・アルウィン

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牧場主の息子ギデオンはミンティに対して愛憎入り混じった気持ちを抱いている。
幼いころから奴隷は家畜と同様と教え込まれたギデオンは、深く根付いている黒人への差別意識によって、ミンティへの思いを抑え込むという複雑な人物。演じるジョー・アルウィンは、めきめきと良い俳優になっていますね!
アン・リー監督の失敗作と言われてしまった『ビリー・リンの永遠の一日』に主演し、『女王陛下のお気に入り』や『ある少年の告白』などに出演しています。
嫌な役が多いけど、意図的かな?
『ハリエット』(2019)の感想

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見渡す限りの星空、夕焼けが輝き、風に揺れる草原。
世界はこんなに美しいのに、生きることはこんなにも厳しい。
命がけで自由を求めたハリエットは自分の自由だけではなく、家族や他の奴隷たちにも自由を与えるために奔走します。
類まれな頭脳と勇気を持つハリエットは紛れもなくヒーローです。ショックだったのは、同じ志で奴隷解放運動を行う黒人と、実際奴隷だったハリエットの温度差。
本当の苦しみを知っているハリエットがいたから、70人もの奴隷を解放することができたのでしょう。
「血の最後の一滴まで彼らに捧げる」と言い切るハリエットの力強い言葉が組織を動かします。
もう一つショックだったのが、同じ黒人が逃げた奴隷を捕まえようとするところ。
いろんな生き方があるとは思うけど、そりゃないよ。
奴隷制度が廃止されてもなお差別は続いています。
私のように、表面的にしか奴隷制度や、彼らが受けてきた差別を知らない人間にとって、本作は無知から脱却できる機会になるかもしれません。
『ハリエット』(2019)の楽曲「スタンド・アップ」

© Focus Features
圧倒的な歌唱力でエンドロールを飾るのは、ハリエットを演じたシンシア・エリヴォが歌う「スタンド・アップ」。
さいっこうです!!
できる事ならエンドロールだけでも爆音上映してほしかった。
この曲はシンシア・エリヴォとジョシュア・キャンベルが本作のために作った曲ですよ。
歌詞も本作にぴったりなのも頷けますね。
「自由か死」しか選択がなかった人たちが希望を求めてひたすら戦う姿を、劇場で見届けてください!