
「人を信じる事」はとても勇気が必要。ディズニーと全興連の方々聞いてますか?!
オススメ度 ★★★★★
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『ラーヤと龍の王国』(2020)の作品情報
製作年 | 2020年 |
原題 | Raya and the Last Dragon |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 108分 |
ジャンル | アニメ |
監督 | ドン・ホール、カルロス・ロペス・エストラーダ |
脚本 | クイ・グエン |
主要キャスト | オークワフィナ(シスー)
ケリー・マリー・トラン(ラーヤ) ジェンマ・チャン(ナマーリ) ダニエル・デイ・キム(ベンジャ) サンドラ・オー(ヴィラ―ナ) |
『ラーヤと龍の王国』(2020)の感想
他者を信じることが出来なくなったことで起きる「個人主義」、「分断」がテーマ。
これは世界で起きている様々な問題に当てはまるのではないでしょうか。
「信じ合う心」の大切さをひたすらラーヤ(観客)に訴え、そこで起きる奇跡を描いた物語。
子どもももちろん楽しめるけど、私のような額にしわを寄せて生きているような大人に観て欲しい。
物語自体は予定調和でハラハラドキドキは少し足りなかったけれど、「いつものディズニーとは違う!」と思わせる設定が用意されています!
本作の主人公ラーヤは、自分たちの運命を宿敵のナマーリに託すという決断をします。
すごい意外性があるけど腑に落ちる素晴らしいシーンでした。
信じるにもほどがあると言いたくなるほど信じ切るラーヤ。
突然世界を救えるのが自分しかいないと思ったら、重圧で逃げ出してしまうけど、ナマーリ頑張った。
ラーヤたちに信じてもらったから、困難に立ち向かえたのよね。
「信じ合う心」が世界を救う。
「信じる」じゃなくて「信じ合う」。
ここがポイントです。
映像の美しさと、普遍的だけれど人生において大切な教訓が詰め込まれた物語。
「信じ合う心」は自分が、周りの人間が前に進むために絶対必要な要素です。
この気持ちがなければ立ち止まったままの人生になってしまいます。
過去に起きたことは変えられないけど未来は自分たちの力で変えられる
それを選ぶのは自分だと教えられました。
そして長い長いエンドロールには、製作スタッフ一人一人への敬意が込められています。
ディズニーがどれだけの気持ちを込めて作品を作っているのか分かった気がしました。
魅力1:映像の美しさ
何といっても映像の美しさに息をのみました。
ディズニーのアニメーション技術はどこまでも進化し続ける!
水の流れや、キャラクターの髪、不思議な力によって水のしずくが宙を舞う。
どれだけ期待されていても、それを超えるポテンシャルがあるディズニーアニメーション。
なんと、400人以上のスタッフが自宅で作品を完成させたそうです!
リモートワークここに極まれり。
魅力2:東南アジアという舞台
『ラーヤと龍の王国』の舞台は東南アジアであることは間違いないですが、どこか特定の国という設定ではないようです。
私は東南アジアを旅したことはありませんが、この映画を観て旅した気持ちになりました。
コロナが収束したらベトナムに行ってやる!
美味しいスープ飲んでやる!!
弔いの花を川に流すところや、人が亡くなったということを示す手の動き。
尊敬する人に対して(?)頭のあたりで手で円を作るところなど、日本にはない文化を存分に感じることができました。
魅力3:百合?シスターフッド?
Twitter界隈では「ラーヤは百合」、「ラーヤは百合」と騒がれていますね。
それを見て「ほほう。」と思ってこの映画を観たのは私です。
人によってとらえ方は違うけれど、私も百合を感じました。
ナマーリとシスーの関係性が。
というよりナマーリが可愛すぎる!
強い戦士でありながら、憧れのシスー(龍だよ)を初めて目にした時の表情!!
憧れが爆発したというより完全に一目ぼれ。
最後シスーに(しっぽで)抱きしめられた時、緊張と喜びで硬直してたもんねー。
少女漫画でああいう場面観たことある!
ラーヤとナマーリの関係はシスターフッド。
女性同士の強い連帯を感じました。
戦うプリンセスたち
男兄弟に挟まれて育った私は、幼いころディズニー映画を観たことがなかったんです。
ドラえもんとかドラゴンボールで育ちました。
大人になって観たディズニー映画の世界を「夢のよう」というには私は心の歪んだ(?)大人になりすぎていたし、当然自我が芽生えまくっているので「王子様を待つことが幸せ??」と、内容そのものに納得できませんでした。
そう、2014年公開の『アナと雪の女王』を観るまでは。
アナのエルサを思う心は、私の汚れ切った心をも溶かしてくれました。
サンキュー、アナ!
周りはとても不気味だったでしょう、急激な私の変化を。
それ以降、ディズニーの描く物語や世界観にどっぷり浸ることが出来るようになりました。
待つのではなく自分で自分の運命を切り開く。
周りの人たちから愛や助言をもらいながら。
そういうプリンセスは、現代に生きる私たちにとってとても身近に感じられます。
ラーヤはひとりぼっちで戦うプリンセス。
今回の物語も、おとぎ話ではなく、世界の人たちへのエールだと思いました。
上映劇場が少ない理由と私の気持ち
昨年劇場公開予定だった『ムーラン』と『ソウルフル・ワールド』の上映が二転三転して、最終的に劇場公開せず「Disney+」の配信のみになったことで、ディズニー側と全国興行生活衛生同業組合連合会との折り合いがつかなかった事が原因で、大手シネコンでの上映がなくなりました。
本作は今までのディズニー作品と違って大々的に宣伝しておらず、ディズニーの新作を上映している事すら知らない人もいると思います。
私はぜんぜん知りませんでした。
大手シネコンで公開しないので、私が暮らす街では字幕版の上映がないのです。
(吹替めっちゃよかったけどね!)
そりゃね、超大企業だからってね、勝手されて大損害を被ってね、泣き寝入りしちゃいかんよ!
でもね、この映画の「信じあう心」が欠けてる!
何より観客の事を大切にしていない。
ディズニーも全興連も。
日本は大々的に上映できる数少ない国なんじゃないの?
その恩恵を投げ捨てるの?
日本はコロナの被害が諸外国に比べると少なくて、昨年6月からは劇場で映画を観る機会が徐々に増えてきました。
2020年の6月、久しぶりにスクリーンで映画を観た時、嬉しくて涙が出たことをはっきりと覚えています。
映画館で観る映画と家で観る映画は全然違うんですよね。
特に映像が美しいこの映画は絶対に劇場で観るべき映画です。
ぜったいのぜったいの絶対に!
『ラーヤと龍の王国』(2020)キャラクター
ラーヤ
ハート国の首長の娘。
魔物を封印することができる“龍の石”の守護者。
バラバラになったクマンドラを元の一つの国に戻そうとするが、信じていたナマーリに裏切られ、魔物ドルーが復活。
父親や国の人々はドルーンによって石となってしまう。
それ以来誰も信じる事が出来なくなったが、父の意思を引き継いで伝説の龍シスーを復活させようと、たった一人(とトゥクトゥク)でバラバラになった石を集める旅に出る。
シスー
伝説の最後の龍。
500年前にクマンドラを魔物ドルーンから救ったと言われる伝説の龍。
自分には他の兄弟龍のような力はないと思っている。
泳ぐのが得意。
「信じる心」を持っていて、ラーヤにその必要性を説く。
陽気で末っ子っぽくてチャーミングなシスー。
めちゃくちゃ魅力的!
ナマーリ
ファング国の首長の娘。
子どもの頃招かれて訪れた「ハート」でラーヤと友情関係を築く。
しかしナマーリはファングの国の民を救うためドラゴンの石を奪う目的でラーヤに近づいただけだった。
自国の事しか考えないような人物に見えるが、クマンドラの復活、龍の復活を信じている。
龍に対する憧れがある。ありすぎる。
ツンデレ(?!)が痛々しすぎるほどかわいい。
『ラーヤと龍の王国』(2020)
この映画では、分断された国を一つにまとめるのは「信じ合う心」だと、ド直球に言っています。
一人の力ではかなわなくても、信じ合える仲間がいれば可能になるのだと。
そんなの当たり前ですよね。
でも会社や家庭という小さなコミュニティの中ですらできていない人は多いのではないでしょうか。
私ですけど。
自分が信じれば何か変化が起きるかもしれない。
やってみる価値はありそうです