【★★★★★圧倒的!】『ノマドランド』(2020)考察とネタバレ感想
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言葉に表すことができない感動。人生観を変える作品。

オススメ度 ★★★★★

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『ノマドランド』(2020)の作品情報

製作年 2020年
原題 Nomadland
製作国 アメリカ
上映時間 108分
ジャンル ドラマ
監督 クロエ・ジャオ
脚本 クロエ・ジャオ
主要キャスト フランシス・マクドーマンド(ファーン)

デヴィッド・ストラザーン(デイヴ)

リンダ・メイ(リンダ・メイ)

『ノマドランド』(2020)のあらすじ

 

リーマンショック後、企業の倒産とともに、長年住み慣れたネバダ州の企業城下町の住処を失った60代女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)。彼女の選択は、キャンピングカーに全ての思い出を詰め込んで、車上生活者、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩くことだった。その日その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流とともに、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく。大きな反響を生んだ原作ノンフィクションをもとに、そこで描かれる実在のノマドたちとともに見つめる今を生きる希望を、広大な西部の自然の中で探し求めるロードムービー。

Filmarksより引用

『ノマドランド』(2020)の感想

ノマドの生活は決して孤独ではない。

眼前に広がる自然が包み込んでくれる。

胸がいっぱいになった。

アメリカという国の雄大な土地と豊かな自然に圧倒される。

スクリーン一面に広がる恐ろしいほどの自然に、心地よく美しい旋律が重なる。

ファーンが悩んだり決断する時、いつでも自然がそこにある。

亡き夫が愛した自然が。

思い出に押しつぶされるのではなく、思い出と共に生きると決めたラストに胸がいっぱいになった

『ノマドランド』は、ファーンが「ハウスレス」にならざるを得なかったという問題提起と、夫を失った喪失との向き合い方、ただそこにあり続ける自然を描いた作品です。

家を失い、社会の外側に出たことで得た、そして知った自由と不自由、孤独とコミュニティのつながり。

自然と隣り合わせで生きる彼らが見て感じる景色を、私はこの作品を通してほんの少し見ることができた。

彼らは孤独ではない。

『ノマドランド』(2020)の考察

ノマドとは?

「ノマド」とは・・・英語でnomado「遊牧民、放浪者」の意味です。

本作では様々な季節労働をしながら車で生活する人々"ワーキャンパー(季節労働をしながらキャンピングカーで暮らす人)"を指しています。

自由を求めて自主的にキャンピングカー生活をする人もいるようですが、本作が焦点を当てているのはリタイアせざるを得なかった人、戦争でPTSDを抱えている人、愛する人を失い喪失感を抱えた人たちです。

そして大半は年金だけでは生活が出来ない高齢者なのです。

特に女性は男性よりも年金が少ない為家賃を支払うことが出来ず、ハウスレスという選択しかありません。

彼らはアメリカにおける格差社会の象徴となる存在です。

季節労働者として

Amazonは低賃金で重労働をしてくれるワーキャンパーを歓迎しています

駐車場を無料で開放し、電気も使えるようにしています。

車中泊が許されない場所もあり、「どこに車を停めるか」ということに頭を悩ませているノマドからすると、Amazonは季節労働にうってつけの勤務先なんですよね。

感謝祭やクリスマスシーズンのかき入れ時には倉庫で日に10時間、ほぼ立ちっぱなしで荷物を梱包したり運んだりという重労働をします。

ワーキャンパーはわずかでもお金をもらえるし安心して車上で暮らせるから一見Win-Winの関係のようです。

けれど彼らなしでは立ち行かないはずなのに、低賃金で一時的にだけ雇うことで成り立つ仕組みを作っている所を見ると、ワーキャンパーは消費社会に消費されているように見えます。

「ホームレス」と「ハウスレス」の違い

学校の教員をしていたファーンはかつての教え子に「先生はホームレスなの?」と聞かれるシーンがあります。

そこでファーンは毅然と「ホームレスじゃない、ハウスレスなの」と答えます。

私にはどう違うのか分からなかったので少し調べてみたら、以下のように定義している方がいました。

「ハウスレス」=経済的困窮

「ホームレス」=社会的孤立

住んでいた町が消え、夫もなくし、年金では生活を維持できないから家を手放しワーキャンパーとなったファーンは「ハウスレス」です。

「社会的孤立」に陥っているわけではなく、彼らのコミュニティの絆は強く繋がっているという印象を受けました。

本当のノマドが出演

ファーンを演じるマクドーマンドと、デビッド役のストラザーン以外は本当のノマドワーカーです。

彼らからにじみ出る哀しさや孤独、喜び、自らを率直に話す彼らを他の人間が演じたり語ったり出来ないだろうと思います。

私は彼らから社会に対する怒りを感じなかったことに驚きました。

誰かのせいにするわけではなく、自分が決めた方向に流れるように生きる姿はとても美しく見えました。

そして彼らの中に完全に溶け込むフランシス・マクドーマンドは恐ろしいほど素晴らしい。

原作に感銘を受けたマクドーマンドが、クロエ・ジャオに監督を依頼し、映画化されたそうです。

マクドーマンドの体からあふれ出る静かな迫力から本作にかける思いが伝わってきました。


ノマドワーカーの選択

この作品では、ワーキャンパーが抱える深い孤独と喪失感が画面いっぱいに表れます。

そして彼らの尊厳も同じように映し出します。

年金生活を勧められても「そんな金額で生活できるか!」と言う代わりに「昔から働くことが好きだから、これからも働きたいの」と言うことで自らの尊厳を守っているように見えます。

それは一種の強がりにも見えるけれど、きっとそうじゃないんだろうな。

ワーキャンパーが選んだのは「自由と孤独」

私たちが選んだのは「不自由と安心」

常に雄大な自然に包まれている彼らは、私たちが死ぬまで見ることがないであろう光景を目にすることができるのです。

それは人と共有する必要はないのです。

資本主義社会

先日鑑賞した『ビバリウム』は"家に縛られるな!人生が台無しになるぞ!"というメッセージが込められていました。

だからといってワーキャンパーになることを勧めていたわけではないけれども「家」に対する映画を立て続けに観たことで、資本主義社会、消費社会への警報が至る所で鳴らされていると(ようやく)感じました。

一生懸命働いて家を買っても、町がなくなれば家の価値も仕事(収入)もなくなる。

安心できる場であったはずの「家」は、確実なものではなかったということに気づかされるのです。

ファーンは劇中で不動産屋に「借金までさせて家を買わせるのは無責任だ」と言っています。

実際に体験したからこそ出てくるセリフですが、搾取する側にはその言葉はまるで届かないでしょう。

この温度差こそがファーンがノマドを選んだ理由ではないでしょうか。

家や物を持たないファーンの方が自由で豊かで、現実に目を背けずに生きている。

『ノマドランド』(2020)の音楽

映像も素晴らしく、登場人物も素晴らしい。

その中でも心に沁みる音楽が、この作品をより良いものにしています。

映像と音楽だけで胸が締め付けられ涙が出てくるという体験は、たくさんの映画を観てきた中でも初めてでした。

 

『ノマドランド』サントラ

01 Oltremare (Divenire) - LUDOVICO EINAUDI

02 Golden Butterflies (Seven Days Walking, Day One) – LUDOVICO EINAUDI

03 On The Road Again (Burn The Van Again) – NOMADLAND CAST

04 Quartzsite Vendor Blues – DONNIE MILLER

05 Epilogue – OLAFUR ARNALDS

06 Answer Me, My Love – NAT KING COLE

07 Next To The Track Blues – PAUL WINER

08 Petricor (Elements) – LUDOVICO EINAUDI

09 Low Mist (Seven Days Walking, Day Three) – LUDOVICO EINAUDI

10 Dave's Song – TAY STRATHAIRN

11 Drifting Away I Go (Nomadland Mix) – CAT CLIFFORD


『ノマドランド』(2020)まとめ

素晴らしい映画だった。

見ている間ずっと胸がいっぱいで、鑑賞後は自由や不自由について、人生の終わり方について考えました。

冒頭Amazonで一緒に働く女性の腕に「家は心にある」というタトゥーが出てきます。

何気ないシーンだけど、ノマドの心の支えとなるような言葉だったなと観終わった後に感じました。

この道しか選べなかった人が多いのに、彼らはその中で私たちのような生き方をする人間よりも、きちんと死と生に向き合って生きている。

彼らにとって自然は息抜きするためのものではなく、共存するもの

ファーンが眺める空や、怖いぐらいどこまでも続く岩、美しい水、厳しい風、そして海、それら全てが彼らの生活の一部。

彼らはきっと最後の最後まで放浪を続けるでしょう。

自ら選んだ道として。

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