
人間関係が希薄な現代の日本人に必要なことを教えてくれる!
『イン・ザ・ハイツ』(2021)の感想、解説をしていきます!
Contents
『イン・ザ・ハイツ』(2021)の評価
項目 | 評価 |
知名度 |
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配役/キャスト |
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ストーリー |
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物語の抑揚 |
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ミュージカル度 |
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おススメ度 |
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『イン・ザ・ハイツ』(2021)の作品情報
製作年 | 2021年 |
原題 |
In the Heights |
製作国 | アメリカ |
上映時間 | 143分 |
ジャンル | ドラマ、ミュージカル |
監督 | ジョン・M・チュウ |
脚本 | キアラ・アレグリア・ヒューディーズ |
主要キャスト | アンソニー・ラモス(ウスナビ)
コーリー・ホーキンズ(ベニー) レスリー・グレイス(ニーナ) メリッサ・バレラ(バネッサ) |
『イン・ザ・ハイツ』(2021)の概要
ミュージカル「ハミルトン」でも注目を集めるリン=マニュエル・ミランダによるブロードウェイミュージカルで、トニー賞4冠とグラミー賞最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞した「イン・ザ・ハイツ」を映画化。変わりゆくニューヨークの片隅に取り残された街ワシントンハイツ。祖国を遠く離れた人々が多く暮らすこの街は、いつも歌とダンスであふれている。そこで育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーの4人の若者たちは、それぞれ厳しい現実に直面しながらも夢を追っていた。真夏に起きた大停電の夜、彼ら4人の運命は大きく動き出す。「クレイジー・リッチ」のジョン・M・チュウ監督がメガホンをとり、「アリー スター誕生」のアンソニー・ラモス、「ストレイト・アウタ・コンプトン」のコーリー・ホーキンズ、シンガーソングライターのレスリー・グレイスらが出演。
映画.comより引用
『イン・ザ・ハイツ』(2021)のクイアポイント
これがねぇ。
私は観ていて全く気付かなかったのですが、美容院を営んでいるダニエラとカーラは同性カップルらしいんですよ。
いつもトリオでいるからそんな感じ全くしなかったんですけどね。
舞台版と設定が違っている為か、特にフォーカスを当てることもなく、ラテンの元気はつらつおばさまたちだと思ってみてました。
トリオの一人が「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」のダヤナラだったこともクイアポイントと言えるかも。
『イン・ザ・ハイツ』(2021)の気になる人
原作、作曲、作詞 + かき氷売りのおじさん:リン=マニュエル・ミランダ
紛れもない天才。
リン=マニュエル・ミランダは、アメリカ建国の父の一人と言われた"アレクサンダー・ハミルトン"の伝記を基にしたミュージカル「ハミルトン」の脚本、作詞作曲を手掛け、主役のハミルトンを自身が演じました。
実在する白人の役に黒人やマイノリティーを起用したり、ヒップホップやソウルミュージックで大胆に脚色した舞台は大反響を呼び、第70回トニー賞13部門16ノミネートを獲得し11部門で受賞したそうです。
観たい?
観れるんですよ!
ディズニープラスの会員になればいつでも「ハミルトン」は観ることが出来るのです。
ただし日本語字幕がない状態で!!
できるけどさ。
英語字幕しかない + アメリカの歴史の知識がない= 観れない
観ることができるのにおのれの力量のなさで観ることができない!情けない!
でもこの夏チャレンジしてもいいかもしれない。
なんたって「ザ・プロム」で要注目のアリアナ・デボーズ出てますから。➡【眩い映像と素晴らしい音楽】『ザ・プロム』(2020)ネタバレ感想 ➡Netflix『ザ・プロム』を100倍楽しむ方法【小説&Audible】
そしてそして、「モアナと伝説の海」の楽曲"How Far I'll Go "を製作しアカデミー賞にノミネートされたことでも知られていますね。
「イン・ザ・ハイツ」は、リン=マニュエル・ミランダが大学時代に書き上げ、作詞作曲をし、2005年に主役のウスナビを自分で演じました。
本作は舞台から16年経っている為、歌詞が古臭く感じたリンは、ツイッターでアドバイスをもらってその場で作り直したそうですよ!
フットワークの軽さも天才レベル(?!)!!
映画版ではピラグア(かき氷)売りのおじさんとして出演しています。
まぁまぁの頻度で出ていますので見逃すこともできません。
エンドロールが終わっても席を立たずにいてくださいね!
締めまでもっていくリンが愛おしいから。
多才で多忙なリン=マニュエル・ミランダの次回作は、Netflixアンドリュー・ガーフィールド主演のミュージカル『Tick,Tick…Boom! チック、チック...ブーン!』で監督をしています。
楽しみすぎる!
レスリー・グレイス/ニーナ
ニーナはワシントンハイツ唯一の秀才で、この地区を離れて遠いロサンゼルスにあるスタンフォード大学へ進学していて、コミュニティー唯一の大学進学者ということで周囲からの期待も大きい。
彼女が抱える悩みは、差別と孤独。
大学に行く意味を失い、ワシントンハイツで再び暮らすべく退学することを決めている。
演じるレスリー・グレイスの美しい歌声はいつまでも聴いていたくなるほどです。
彼女はDCコミックスの映画「バットガール(原題)」の主役を勝ち取ったそうですよ!
『イン・ザ・ハイツ』(2021)の感想
ラテン音楽やヒップホップに馴染みがなくても体が勝手に踊りだす!
移民たちが抱える問題をカラフルにパワフルにパッショナブルに描く今までにないミュージカル作品です。
移民の国アメリカにおけるワシントンハイツ
移民の国として知られているアメリカは、2060年には白人の割合が人口の半数以下になるという予想がされており、マイノリティがマジョリティーになる日は近づいてきているようです。
その移民の中でもヒスパニック系は大部分を占めているのに、未だこんな差別があるのかと映画を観て驚きました。
ニューヨークのマンハッタンの北部に位置する「ワシントンハイツ」はドミニカ系移民が集まる地区。
彼ら移民は社会的に信用されておらず、差別や貧困の中でみんな小さい夢を持って日々過ごしています。
デザイナーになりたいという夢を持ち、都会にに引っ越して夢を叶えようとするバネッサの前に立ちはだかるのは「社会的信用」がないこと。
いくらお金があっても信用されておらず、引っ越しさえままなりません。
そしてワシントンハイツ出身のエリート、ニーナの悩みは彼女の美しい歌声も相まって胸にずっしりと響きました。
コミュニティからの期待を一身に背負っているけど、父親に大変な思いでお金を工面させてまで大学に行く意味を見いだせないでいる。
大学では何かが無くなったら真っ先に疑われ、食事会に行っても給仕係と間違われる。
そんな彼女がソニーのような不法移民が就職できないという問題を目の当たりにして、自分の意思で再び大学に行くことを決めるくだりは感動的。
さらにワシントンハイツは地価が高騰していて、ダニエラの美容院も生き残るには移転するしかないのです。
こういった様々な深刻な問題を、仲間と共に情熱的に前向きに解決してゆくのです。
日本人との違いに驚くとともに、仲間に入れてくれー!!と思うのです。
『イン・ザ・ハイツ』ネタバレ感想
『イン・ザ・ハイツ』が他の作品と違う所は、もちろんヒスパニック系の人たちが主役であることなんですが、それによって未だかつてないパワフルなミュージカル作品となっている事です。
更に言うと、ただのラテンミュージックだけでなくヒップホップが融合しているという点で、今まで観たミュージカル作品とは一線を画しています。
移民してきた者にとってアメリカのヒップホップは子どものころから身近に流れる音楽。
故郷のラテンミュージックとアメリカのヒップホップの融合は、この映画の答えになっているのではないかと思いました。
彼らには問題を解決する力がある、仲間もいる、情熱がある。
先人たちが夢や希望をもち、苦労してたどり着いたアメリカ。
彼らは僅かな賃金で絶えず働いくことで、その夢を子どもたちに託したのです。
その夢を受け継いでこの地で生きていくことを決断したウスナビの表情は明るく、しっかりと前を向いています。
圧巻だったのは舞台版でもアブエラを演じたオルガ・メレディスのソロパート。
車内の演出も、彼女の歌声も素晴らしく、移民として祖国を捨てざるを得なかった者の苦悩と葛藤が涙を誘います。
『イン・ザ・ハイツ』あんまりだったところ
冒頭子どもたちにカリブ海らしき海辺で子どもたちに「ヌエバヨーク(ニューヨークのスペイン語読み)にあるワシントンハイツと言う地区の話をするところで私たち観客はミスリードされます。
昔を懐かしむようにウサナビが語るけれど、オチとしてはヌエバヨークのワシントンハイツで子どもたちにお話をしているのでしたー。
そこがちょっとね。
製作者が狙っていたほどの反応は返せないというかね。
殆ど記憶もない故郷にこだわらず、問題があってもみんなで解決していけるコミュニティがあるワシントンハイツこそが俺の居場所なんだ!という決断自体はよいと思うけれど。
ウスナビの心の動きが全然わからなかったしね。
『イン・ザ・ハイツ』(2021)まとめ
人種で問題の解決に対する姿勢が全く違うところが面白かったです。
日本人、少なくとも私は自分の問題に自分だけが向き合うように解決していくけれど、ラティーノには仲間がいる。
そこがものすごくうらやましく感じました。
ノリもリズム感も情熱も全部うらやましかった。
いつの間に自分はこんな人間になってしまったのか。
彼らの情熱を目の当たりにして喜びと羨望の涙が出た。
おばあちゃんのソロパートと、移転するのに誰も出てこない町の人たちにダニエラが「ヘイ!あんたたちなにしてんのさ!」みたいに歌い上げるところが大好きでした!