【嘘をつき通した気になってる家族が愛おしい】『フェアウェル』(2019)ネタバレ花子の感想
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その嘘、バレバレです。

オススメ度 ★★★☆☆

『フェアウェル』(2019)の作品情報

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製作年 2019年
原題 The Farewell
製作国 アメリカ
上映時間 100分
ジャンル ドラマ
監督 ルル・ワン
脚本 ルル・ワン
主要キャスト オークワフィナ(ビリー)

ツィ・マー(ハイヤン/父親)

ダイアナ・リン(ルージアン/母親)

チャオ・シュウチェン(ナイナイ)

 

 

『フェアウェル』(2019)のあらすじ

NYに暮らすビリーと家族は、ガンで余命3ヶ月と宣告された祖母ナイナイに最後に会うために中国へ帰郷する。家族は、病のことを本人に悟られないように、集まる口実として、いとこの結婚式をでっちあげる。ちゃんと真実を伝えるべきだと訴えるビリーと、悲しませたくないと反対する家族。葛藤の中で過ごす数日間、うまくいかない人生に悩んでいたビリーは、逆にナイナイから生きる力を受け取っていく。
思いつめたビリーは、母に中国に残ってナイナイの世話をしたいと相談するが、「誰も喜ばないわ」と止められる。様々な感情が爆発したビリーは、幼い頃、ナイナイと離れて知らない土地へ渡り、いかに寂しく不安だったかを涙ながらに母に訴えるのだった。
家族でぶつかったり、慰め合ったりしながら、とうとう結婚式の日を迎える。果たして、一世一代の嘘がばれることなく、無事に式を終えることはできるのか?だが、いくつものハプニングがまだ、彼らを待ち受けていた──。
帰国の朝、彼女たちが選んだ答えとは?

引用:filmarks

『フェアウェル』(2019)の感想

ナイナイは気づいてた?!

感動傑作だと思って観るのは危険です。

これはコメディでもあるのです。

でもところどころに違和感があって、もったいなかったな。

その違和感こそが監督が描きたかったことなんだろうけど。(文化の違いってこと)

結論から言うと、家族がついた優しい嘘はナイナイにばればれですが、彼らみんなのナイナイへの愛は、ちゃんと伝わってたよということ。

「(ナイナイには)絶対言うなよ」と、しつこくビリーにくぎを刺す叔父のセリフは、のちのスピーチの場の布石となっております。

息子の結婚式のスピーチなのに、号泣しながら母親ナイナイへの気持ちを爆発させる叔父さんかわいい。

観客一同「お前がばらすんかーい!」と叔父さんに突っ込むという演出(?!)です。

ナイナイは健康のために太極拳(ですか?)をやってますからね。

誰よりも自分の事を知っていたんじゃないかな。

アメリカに向かうビリーを抱きしめ送り出す表情は、(お互いが)永遠の別れになると知っているように感じました。

大切なことは本人に知らせるか知らせないかということじゃないんだ。

欧米映画ばかり観てきた私に、言葉の大切さと、言葉以上の大切なものを教えてくれました。

『フェアウェル』(2019)感じた違和感

「ナイナイに病気を知られないこと」

このミッションのためにはビリーの気持ちなんてお構いなし!

ここに違和感がありました。

ビリーも親族やんか。ナイナイもビリーの事大好きやんか。

ビリーの気持ちも、ナイナイの気持ちも踏みにじっているのでは?!

とても自分勝手なんじゃないか?!と思わずにはいられませんでした。

でも根本から考え方が違うのですね。

以下に考えの違いを書き出しました。

中国に住む親族の考えと、アメリカに住むビリーの考え

中国に住む親族の考え

中国では癌で死ぬということは「病気ではなく、癌の恐怖が人を殺す」ということ。

「わざわざ宣告せずに、残された日々を普通に生きて欲しい」

個人の命は家族や社会の一部であり、本人だけの人生ではない。

嘘をつくことで残された家族が重荷を背負う。

アメリカに住むビリーの考え

「信頼する者から嘘をつかれ、自分が死ぬことを知らずに残りの人生を過ごすなんて」

アメリカでは命は個人のもの。

本人に知らせないのは違法。

現代の日本に生きる私からすれば、絶対に知らせて欲しいです。
それは元気だから言えるのかもしれないけど。
恐怖で死ぬタイプだから、私。
ビリーが「ナイナイはみんなにお別れを言いたいんじゃないかな」とボソッとつぶやいたシーンでは胸を締め付けられました。

中国の格差

ナイナイに病気を知らせないように、親族で診断書の内容を変える姿はスリル満点で、『9人の翻訳家』を彷彿とさせます。(ちょっとだけね、ほんのちょっと)

そこまでするんか!と、証拠を隠滅(良性の腫瘍?!)する姿はナイナイに対する大きな愛と、何としてもミッションを遂行するという生真面目さを感じました。

そのシーンでは中国の格差にもさらりと触れています。

診断書を受け取ったビリーは中国語が読めないから、お手伝いさんに読んでもらおうとするけど「学校に行っていないから読めない」と。

このご時世にそんなことがあるのか?!

もちろん監督の体験を元にしただけで、事実とは違うのかもしれませんが、さらりと流すにはあまりにも衝撃的なシーンでした。

もう少し掘り下げて欲しかったけど本筋からずれてしまいますね。

『フェアウェル』(2019)花子の一番好きなシーン

命を扱った作品なので、胸に熱いものがこみあげてくる作品です。

しかし淡々とひょうひょうと過ぎゆく日常にはユーモアが広がっています。

何の脈絡もなく、ナイナイの妹が飼っているチワワが歌うシーンがかわいかった。

「家族の団らん」を表すのにはうってつけな登場でしたね。

『フェアウェル』(2019)ビリーのアイデンティティ

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ビリーはアメリカで暮らす中国の移民です。

幼いころに訳も分からず親族と離れ離れになったビリーは、アメリカ人としての自分と、中国人としての自分のアイデンティティに揺れているように思いました。

親戚も殆どいないアメリカで、不安な表情の両親と暮らしていた日々は「何も知らされなかったからつらかった」と、胸に秘めた思いを母に伝えます。

何が正しくてどうすればよかったのか。

ビリーにとっては「知らせること(伝えること)」が相手に対する真摯な対応なんだということ。

言葉の大切さ、必要性が感じられたシーンです。

『フェアウェル』(2019)気になる人

アイコ役の人が気になって仕方がありませんでした。

なんでやねんと言いたくなる選曲のデュエットや、日本人らしく(?!)存在感を消すたたずまい。

染まっているようで染まっていない、それでいて家族に馴染んでいるような不思議すぎるアイコを絶妙な間で演じてました。

演じるのは水原碧衣さん。

超名門北京電影学院の演劇科に留学、史上初留学生が首席卒業という快挙を果たしたというお方!

そして国際高IQ組織MENSAの会員だそうです。

人口の上位2%のIQを持つ人しか入れない組織ですよ。

選ばれし天才ですよ!

そうとは感じさせませんでしたよ!←失礼!!

これからの活躍が期待できそうです!

『フェアウェル』(2019)まとめ

「実際にあったに基づく」

この冒頭の一言で心が掴まれました。

中国とアメリカの思想の違いが浮き彫りになるという作品ですが、どちらかが正解ということはないんですね。

喜びも悲しみも万国共通。

自国だけで暮らす人間には他の考え方は受け入れがたいでしょう。

私は海外で暮らしたことがありません。

本作を観たことで、頭にぼんやりあった異国間の文化の「違い」をはっきり知るという体験ができました。

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