誰もが希望を必要としている『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)ネタバレ感想
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

エヴァンの嘘は現実になり得たかもしれない

『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)の感想、解説をしていきます!

『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)の評価

項目 評価
知名度
配役/キャスト
ストーリー
物語の抑揚
孤独や死について考えさせられる度
おススメ度
スポンサーリンク

『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)の作品情報

製作年 2021年
原題

Dear Evan Hansen

製作国 アメリカ
上映時間 138分
ジャンル ドラマ
監督 スティーブン・チョボウスキー
脚本 スティーブン・レベンソン
主要キャスト ベン・プラット(エヴァン・ハンセン)

ジュリアン・ムーア(ハイディ・ハンセン)

ケイトリン・デヴァ―(ゾーイ・マーフィー)

エイミー・アダムス(シンシア・マーフィー)

コルトン・ライアン(コナー・マーフィー)

『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)の概要

トニー賞で6部門を受賞し、グラミー賞、エミー賞にも輝いたブロードウェイミュージカルを映画化。監督を「ワンダー 君は太陽」のスティーブン・チョボウスキーが務め、ミュージカル楽曲を「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」「アラジン」など大ヒットミュージカル映画に携わってきたベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当。学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいるエヴァン・ハンセンが自分宛に書いた「Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。後日、コナーは自ら命を絶ち、手紙を見つけたコナーの両親は息子とエヴァンが親友だったと思い込む。悲しみに暮れるコナーの両親をこれ以上苦しめたくないと、エヴァンは話を合わせ、コナーとのありもしない思い出を語っていく。エヴァンの語ったエピソードが人々の心を打ち、SNSを通じて世界中に広がっていく。エヴァン役をミュージカル版でも主役を演じたベン・プラットが演じるほか、ケイトリン・デバー、ジュリアン・ムーア、エイミー・アダムスらが脇を固める。

映画.comより引用

『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)の感想

鑑賞直後と、数日たってからの感想がガラッと変わる作品でした。

素晴らしいオープニングだったので、名作の予感がしたけど、その予感はちょっと外れました。

楽曲は素晴らしいし、キャストの歌声や演技もとてつもなく良い。

特にケイトリン・デヴァ―の繊細な演技と歌声は本作でも遺憾なく発揮されています。

初めて聴いたジュリアン・ムーアの歌声(そして歌詞)は最高だったし、エイミー・アダムスの歌声と包容力は抜群。

もちろん主役のエヴァン演じるベン・プラットの歌声は極上で鳥肌が立つほど。

でもどうしても土台となるストーリーが気に食わなかった

成り行き上コナーの親友を演じることになり、コナーを失った穴を埋めるように遺族の家庭に入り込むことになったエヴァン。

疑似家族として全員幸せそうでした。

そこにはお互いの「こういう人生だったかもしれない」が詰め込まれていて胸が苦しくなってきます。

「コナーが生きていれば」、「温かい家庭があれば」

それぞれが失ったものを都合よく埋めていく

コナーの家族は、(手に負えないけれど)愛する息子を失い、それを理解はできても現実を受け入れられません。

コナーは幸せだっただろうか、コナーは最後まで生きようとしていただろうか、か細い糸をたぐってでも希望を持ちたいのです。

でもエヴァン。

お前はなんだ。

コナーの死をなんだと思ってるんだ。

別人格を作り上げてまで遺族に希望を持たせるなんて、恐ろしく残酷!

そう思ってエヴァンに激おこしてたら、後半になってエヴァンの骨折の理由が明らかになります。

彼は木から落ちたんじゃなく、生きるのをやめようとしたらしい。

ここで、私たち観客はエヴァンの深い深い孤独を初めて知るのです。

(そしてエヴァンを責めたことに対して自己嫌悪に陥ります)

そんなにも辛くて悲しくて孤独だったのか。

でも誠実であってほしかった。

彼の死を悼むとか、彼の家族を労わってほしかった。

突然降ってわいた自分の理想の家庭の中にただ溶け込んでゆく。

エヴァンが絶望的に孤独だったから温かい家庭の一員になれて嬉しかったんだと思う。

好きな人と付き合えることになったし、これが本当の自分の人生なのかもと錯覚したんだろう。

結局エヴァンの嘘はコナーの家族を一瞬だけ救い、彼らはエヴァンの一生を救った。

ここまでが上映終了後すぐの感想です。

それからなぜかこの作品の事が頭から離れず、エヴァンのついた嘘や孤独、コナーやコナーの家族のことについてずっと考えていました。

するとこの作品の本質がようやく見えてきたのです。

生きることをやめようとしたエヴァンの目の前に、生きるためのかすかな光が見えたなら、そしたら誰だって死に物狂いでそこに向かうだろうと。

だからエヴァンはコナーと同じ選択をしなかった。

コナーに会わなければ恐らくコナーと同じ道を選んだだろう。

でも絶望的な孤独を母親に打ち明けて、母親からめいいっぱいの愛を受けて前を向いて生きている。

周りには一歩も前に進んでいないように見えるかもしれない。

でも確実にエヴァンは変わった。

嘘を謝罪し、コナーと向き合った時間は、エヴァンが初めて自分自身と向き合えた時間なのかもしれない。

エヴァンが気づけて良かった。

エヴァンが生きていてよかった。

コナーを知ろうとするうちに「コナーが生きていれば」と彼も思ったはず。

「コナーが生きていれば」

そうすればエヴァンの嘘も現実になったかもしれない

エヴァンの嘘に違和感を持ち続けたけれど、そんなかすかな希望を切望していることに気づきました。

生きることがつらくて、諦めそうになっても、僅かな望みが目の前にあるなら、どんな手を使っても絶対にそのチャンスをつかんで離さないで欲しい。

とにかく生きていて。

『ディア・エヴァン・ハンセン』(2021)まとめ

『ディア・エヴァン・ハンセン』は大ヒットブロードウェイの映画化です。

Netflixの『ザ・プロム』もハッピーエンドながらかなり重いストーリーでしたが、『ディア・エヴァン・ハンセン』は群を抜いた重おもミュージカルです。

ブロードウェイ版でもエヴァンを演じたベン・プラット。

彼の歌唱力は『ピッチ・パーフェクト』で知っていましたが、彼の歌声が発揮されたのはNetflixドラマ『ザ・ポリティシャン』だと思うのです。

ジョニ・ミッチェルの「リバー」や、ビリー・ジョエルの「ウィーン」を美しく歌い上げ、その歌声に度肝を抜かれました。

そしてエヴァンが恋する少女であり、コナーの妹ゾーイを演じたのは『ブックスマート』のケイトリン・デヴァ―。

『ブックスマート』ではアラニス・モリセットの「You Oughta Know」を歌ってました。

魅力がやばい要注目の女優です。

(Disney+で放映しているドラマ「doposick」でも好演していますが、好演すればするほど心が痛むので観てられないけど観てしまう作品ですので機会があればぜひ観てください!)

私は鑑賞直後はコナーに対するエヴァンの言動が許せなくて、死者を冒涜するな!と憤ってました。

でもコナーはエヴァンでもあるのです。

そしてエヴァンには「こうであったら」という微かな希望があるのです。

生きていれば「こうであったら」は現実になるかもしれない

絶望的な孤独を感じたことがない私には、エヴァンやコナーの気持ちが分からないかもしれない。

けれど彼らのような人に手を差し伸べることが出来る人間でありたい。

いやー、本当に考えさせられる作品でした。

 

スポンサーリンク
おすすめの記事